認知症の捉え方の変化

認知症の方への捉え方が変わってきました。

20年以上前、「認知症」は「脳の障害」と捉えられ、認知症の対応は家族、介護者への共感であり、当事者のご本人抜きで決め事をしていくことがほとんどでした。どうしても家族の「大変なんです」という話に終始し、本人を置き去りにしてしまいがちでした。私たちは、「認知症の人」の “人” に焦点を当てなければならないと思っています。

BPSDとCBの考え方

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)は、当事者の「行動、心理の症状」であり、以前は「問題行動」と言われていました。BPSDは、周りの人が困るという本人の症状を指します。それに対してCB(Challenging Behavior)チャレンジング行動という言葉があり、これは当事者も困っているという視点です。CBは、欲求が満たされないことによる本人なりの「伝達」であり、欲求を満たすための本人なりの「努力」や欲求不満の「サイン」でもあります。周囲からの目線だけでなく、本人からの目線も大事と考えます。

認知症の用語を再考する

徘徊

徘徊とは、無意味に歩き回ることです。実際の状況は、住んでいる家が認識できない、両親が亡くなっていることが分からない、子供のころに住んでいた実家は既にない等です。本人の心を覗いてみると、「どうしてここにいるのだろう…ここにいていいのかな」「今ここにいる自分とつながりが分からず、漠然とした不安に自問自答している」「お父さんお母さんが待っているから実家に帰らなくては…」「外に出てみよう、ちょっと角を曲がれば家に帰れる」という具合です。

もの盗られ妄想

もの盗られ妄想は、被害妄想の一つです。その状況は、物を探し出せない、しまった場所を覚えていない等です。本人の心を覗いてみると、「おかしいな…ここに置いてあるはずなのに。ボケたのかな。そんな情けない自分ではないはずだ」「さっき嫁が食事を運んできてくれたが、他に目的はないのかな…」「頼っていいのか、ちょっと怪しそうだ。やっぱり、自分がしっかりしなければ」

普段使っている認知症の用語を認知症本人の気持ちになって、言葉(用語)を変えることが必要となってくるような気がしています。